核兵器禁止条約に日本は反対し、不参加を決めました。
被爆国の日本がなぜ?って声も多いようです。
でもそれにはちゃんと重要な理由がありました。
核兵器禁止条約に参加することは、逆に日本が危険になることだったんですね。
「アメリカに気をつかって」なんてことじゃなく、日本の安全のために反対して不参加を決めたんですね。
核兵器禁止条約は核兵器の廃絶を望む世界中の人たちの希望の条約のように言われています。
核兵器禁止条約を希望の条約と思っていた人たちは、日本が反対し不参加を決めたことに、なぜ?を通り越して怒りさえ感じているようです。
でもその希望の条約は、現実に立ちはだかっている「核の廃棄」という最大の課題をクリアした後にこそ、未来の安全を約束する希望の条約になるのですね。
今回は、なぜ日本は反対したのか?不参加の理由と参加する危険性について、考えてみます。
よろしければ最後までお付き合いください。
目次
「核兵器禁止条約」は希望の条約?希望の条約は現実の後に!
出典:https://nuclearabolitionjpn.wordpress.com/category/
「核兵器禁止条約」は核兵器の廃絶を望む世界の人たちの希望の条約のように言われています。
この条約に希望を見出していた人たちは、この条約に日本が反対したことは、なぜ?なんて通り越して怒りを感じているようですね。
そういう人たちに限らず、一見もっともと見える「核兵器禁止」の条約になぜ、日本は反対するのだろう?と不思議に思うでしょうね。
僕も「なぜなんだろう?」と普通に思いましたよ。
それで、核兵器禁止条約の中身を見てみると、その理由が見えてきました。
核兵器禁止条約は核兵器の何を禁止しているか?簡単に言うと
◆核兵器を開発・実験・生産すること
◆核兵器を保有すること
◆核兵器を移転すること
◆核兵器を管理すること
◆核兵器を配備すること
◆核兵器を使用すること
◆核兵器で威嚇すること
です。
これがすべての国に用いられると、核兵器はどこにもなく「核兵器で攻撃される心配のない夢のような世界」になります。
この禁止条約には、たくさんの禁止事項がありますが、この中でまず注目するのが保有の禁止です。
保有を禁止していますから、今の核保有国は、条約に参加したとたん条約違反になるので参加できません。
核保有国がこの条約に参加すると、すぐに今持っている核兵器をすべて廃棄しなくてはいけません。
でも、それはなかなか簡単にはできないのです。
現実はその部分でとっても苦労しているのです。
核保有国は核をすぐに放棄できませんから、この条約には参加できないんですね。
核保有国が参加せず、非核保有国だけで結ぶこの条約は、非核保有国に制限を加えるだけになってしまいます。
まずは核保有国の核を削減していくことしなくてはいけないのに、核保有国が参加できない条約ですから、今の核兵器の削減には貢献できないんです。
もし、すべての核保有国が核兵器を放棄した夢のような世界が訪れたら、その時こそ「核兵器禁止条約」に世界の国々が参加する時です。
世界に核兵器が存在しない状態で世界の国々が参加して、どの国も核兵器を保有しないように約束すればいいのです。
「核兵器禁止条約」は夢のような条約ですが、これは「すべての核を放棄する」という現実の課題をクリアした後にしか有効にならないのですね。
核兵器禁止条約は、理想を追い過ぎたため核保有国が参加できなくなりました。
結局、非核保有国だけに核保有を禁止する条約になってしまったのです。
非核保有国の核保有禁止なら、既に「核拡散防止条約(NPT)」とう条約があります。
「核拡散防止条約(NPT)」は核兵器が世界に広がらないように定めた条約です。
この条約は、非核保有国の核保有を禁止しただけではなく、核保有国にも核の削減の努力を約束させています。
「核拡散防止条約(NPT)」には、核保有国も参加していますが、「核保有国も参加」という表現は正確ではないかもしれませんね。
というのも、核保有国が参加したのではなく、この条約を結ぶ時点で核兵器を保有している国を「核保有国」として認めたからなんです。
「一部の国だけに核保有を認めるなんてズルい!」とインドやパキスタンはこの条約に参加しませんでした。
ズルいというのは確かですが、「核を放棄するむずかしさ」を考えたとき、その時点での核保有国は「核保有国」として認めて、核保有国もこの条約に参加させたことは意義は大きいのです。
「核拡散防止条約(NPT)」で核保有国にも「核の削減」へ向けて努力することを約束させた意義は大きいのですね。
「核抑止力なんてない!」って言うけれど・・・
「核抑止力」という言葉があります。
第2次世界大戦後、一度も核兵器が使用されていないのは、「核抑止力」が働いているからだ、ということです。
一方で、「核抑止力なんてない!」という意見もあります。
核抑止力がない世界というのは、核兵器がどこにもない世界であれば有効でしょう。
でも今現在、核保有国がある中では、核抑止力が働いていると考える方が現実的のようです。
というのも、核兵器での攻撃をさせないために有効なのは核兵器を持つことだからです。
これは、一般社会で考えてもわかります。
ボク 「わあー大変!何か武器はない?誰か持ってきて!」
仲間1「刀があったよ!」
ボク 「おい悪党!こっちにも刀があるんだぞ!」
悪党 「うッ?あいつら刀持っているぜ。簡単じゃないな~」
仲間2「拳銃もあったよ!」
ボク 「おお、やった!おい悪党、こっちは拳銃だ!」 空に向けて、バンバンバンッ!
悪党 「こりゃあ、無理だわ!ここはやめておこう!」
ボクたち「ふう~、拳銃があってよかった~」
悪党が持っている武器以上の武器を持っていること、悪党は手を出させない。
それが「抑止力」なんです。
♪というかこのたとえ、一般社会ではないじゃなくて完全にマンガの世界でしょ。(失礼!)
現在、核兵器以上の強力な武器がないので、核兵器に対する抑止力は核兵器しかないのですね。
「核保有国が本気で核を放棄すれば核をなくすことができる」という意見もあります。
でも、残念ながら核兵器を世の中から完全になくすことはできないのです。
「チチンプイプイ、核兵器なくな~れ♪」
と、魔法で、一気に核兵器をなくすことはできるのならいいですけど・・・。
でもそんな魔法はこの世に存在しません。
たとえば世界中の核保有国が
「わかりました、持っている核兵器は全部破棄します!」
と約束したとします。
そして1年後、みんな約束を果たして「全部なくしましたよ!」と宣言したとします。
でも「よかったよかった。これで、人類の夢がようやくかなった」となるでしょうか?
残念ながら、そんなこと絶対にはない!と思います。
どこかの国や組織が隠し持っている可能性があります。
核開発の技術はどこかに残っていますから、こっそり悪党が開発する恐れもあります。
そうなると悪いたくらみを持った国や組織だけが核兵器を持つ、という恐ろしい世界の始まってしまうのです。
人を信じたい心優しい日本人は「そんな悪い国はないでしょ!」と思いたいでしょうが、残念ながら世界はそうなのです。
核兵器を開発や保有する国が出ないようにするには、核兵器の開発をしようとする国に
「そんなことしたら、核攻撃するぞ!それでもいいのか!」
と核兵器で抑止するしかないのですね。
核兵器を開発させないために核抑止力をどこかに残しておく必要があるのです。
完全になくすことはできないのです。
誰かがどこかで核兵器を管理して、核兵器で悪いことをしないように見張らなくてはいけないのですが、その仕組みができていません。
その仕組みができていない以上、核保有国が危険を冒して、一方的に核を放棄することはできないのですね。
一部の国だけに核保有を認めている今のあり方は決していいものだとは思いません。
でも、「世界中から、核を一瞬にそして完璧になくす魔法」なんてありません。
今の状態から針を戻して、核兵器のない世界にすることはできないのです。
ですから、今は核保有国に参加して努力を明記した「核兵器不拡散条約(NPT)」を前に進ませていくこと大切なのです。
核禁止条約に潜む危険性~日本が反対・不参加の理由
核兵器禁止条約は、現実的ではないだけではなく、危険性もあります。
というのも、核兵器禁止条約は、核兵器の管理や配備も禁止しているからです。
ヨーロッパの非核保有国、たとえばドイツはアメリカの核兵器を共同管理して、ドイツ国内に配備しています。
それで、ロシアの核への抑止力としているのですね。
核兵器禁止条約は管理や配備も禁止なので、それもダメってことになります。
日本の周りでは、中国とロシアが核保有国です。
反日教育をしている中国が核保有国であることは、とても不安です。
そして今、北朝鮮が核兵器を保有しようとしています。
北朝鮮や中国の核兵器がもし日本の脅威となった時、日本はどうやって日本を守るのでしょうか?
もちろんそうならないことを望みますが、可能性としてはあります。
核兵器禁止条約に参加してしまうと、核兵器の開発や保有はもちろん、ドイツのようにアメリカの核を配備することも難しくなります。
核の抑止力を持つことはできなくなります。
絶対に核兵器の配備するべきだとは言いません。
ですが、「核兵器を持つべきだ!」という議論が盛んになり、
「もしかしたら、日本に核兵器が配備されるかも」と思わせるだけも、抑止力になります。
核兵器禁止条約に参加するとその議論さえもできなくなるのです。
日本の周りに核保有国がある限り、核兵器禁止条約に参加するのは危険なのですね。
核兵器禁止条約の問題点のまとめ
核兵器禁止条約の問題点をまとめてみました。
◆一気に核保有国の核廃棄を求めたため、核保有国が参加できなくなった
◆非核保有国だけが参加することになってしまい、非核保有国だけに核抑止力を持つことを許さない条約になってしまった
◆よって、今よりもっと核保有国にとって有利な状態になってしまった
核兵器禁止条約は、世界中のすべての国が参加して、初めて有効になる条約です。
そのためには、まず今存在する核兵器を全部なくし、その後に結ぶべき条約です。
現実を見ず、理想を求めすぎたようです。
「核保有国が参加しないのは、自国の有利性を保つためのエゴだ!」という意見もあるでしょう。
確かにエゴという面もあるとは思いますが、一気に廃棄することは現実的ではないし、一部のテロ集団等に核が渡ってしまう危険性もあります。
現実に照らし合わせながら、少しずつ核兵器を減らしていくしかないんですね。
核兵器を作ってしまった人類が、背負わなければならない重荷なんですね。
おわりに
「核兵器禁止条約」は核兵器の廃絶を望む世界中の人の希望の条約のように言われています。
でも理想を追うばかりに核保有国が参加できないという、現実離れした条約になってしまっています。
夢の条約は、現実の「すべての核兵器をなくす」という課題をクリアして、「もう二度と、我々人類は核兵器を持たないぞ!」との誓いの元、結ぶべき条約です。
多くの人がなぜ?と思った日本の反対ですが、不参加には重要な理由がありました。
日本の周りに核兵器の脅威が発生する危険がある以上、日本も核兵器を配備できる余地は残しておくことが必要なようです。
逆に日本の周りの核保有国は、日本が核禁止条約に参加して核配備できないようになることを望むでしょう。
「アメリカに気をつかった」とか言われる日本の反対・不参加ですが、日本は日本を守るため、核兵器禁止条約に不参加をきめたんですね。
ということで【核兵器禁止条約なぜ日本は反対?不参加の理由~参加に潜む危険性!】お届けいたしました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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